プロローグ。

6/22
前へ
/217ページ
次へ
ハッ!!見ているだけではダメじゃない!? 子守りなんだし、私がお世話しなくては。 それにせめてコミュニケーションを取れるまでには ならないと。 何故、嫌われてるのか分からないけど 気まずいままだと嫌だし仲良くなりたい。 テンパる気持ちを必死に落ち着かせリビングの方に 向かった。広いリビングで画用紙に絵を描いて 遊び始める睦月君の姿が目に映った。 あ、そうだわ!? 先生も言っていたし、私が持ってきたケーキを出して コミュニケーションを取ろう。 「睦月君。お姉ちゃん 美味しいケーキを持って来たの。 一緒におやつにしましょう」 そう言いながらキッチンに向かった。 ケーキなら子供も好きだろうし 上手くいけば、仲良くなるきっかけになるかも? 冷蔵庫からケーキを取り出していると気になるのか 睦月君がこちらに寄ってきた。よしよし。 興味を持ってくれたわ。 「睦月君。ショートケーキとチョコケーキと チーズケーキならどっちが好きかな?」 そう質問してみる。 どちらも子供の好きなやつだ。 しかし睦月君は、ジッとこちらを見たまま無言だった。 まただ……。どうしても話しかけても答えてくれない。 何で?何がダメだったの? 頭の中が、ぐるぐる回りテンパってしまう。 落ち着くのよ。また失敗する前に 他にいい方法があるはずだわ!? とりあえずケーキの入った箱を睦月君に見せてみた。 「ほらほら。こんなに美味しいケーキがあるのよ~? 睦月君食べたくな~い?」 笑顔でもう一度話しかけてみた。 そうしたら睦月君は、ショートケーキと チョコケーキを指を指した。 あれ?これって答えてくれたの? その瞬間。 河合先輩の注意事項を思い出した。 慌ててケーキをテーブルに置くとスケジュール帳の メモを見た。そして、やっとその意味を理解する。 睦月君の行動を……。 確かに河合先輩は、言っていた。 『息子の睦月君は、極度に人と話すのが嫌う子でね。 別に言語障害がある訳でも人見知りをする訳でも 無いのだけど、ただ性格の問題というか。 とにかく人と長く会話をするのを極端に嫌がるから 会話をする時は、YESかNOやジェスチャーで 答えられる単語にしてやって。 それ以外は、大人しく聞き分けのいい子だから 君とも仲良くやれると思うから』 そう言っていた。つまり……こういう事なのね? 今さっきは、言葉を多くさせる質問をしたから 答えてくれなかったけどケーキを見せたから指を指して 回答してくれたってことか。なるほど だったら、こちらも
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!

505人が本棚に入れています
本棚に追加