プロローグ。

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ビクッと震え上がった。 ど、どうしよう。 めちゃくちゃ怒っているわ……。 私、慌てて立ち上がると頭を下げた。 「あ、あの……すみません」 どうやって説明したらいいのだろうか。 何とも情けない姿になっていた。 先生は、状況が分かったのかハァ…と深いため息を吐かれた。 「片付けておけよ…ったく…」 そう言うとリビングから出て行ってしまった。 あぁ、またやってしまった。 前も他の作家に似たような失敗をして怒らしたばかりなのに。 ドジだと自覚しているのに なかなか自分で直す事が出来ない。 やっぱりテンパると注意力が散漫になっちゃうのよね。 しゅんと落ち込みながらヤカンなどを片付けていると ポンと肩を叩かれた。えっ? 振り向くと肩を叩いのは、睦月君だった。 「……睦月君?」 「…ドンマイ」 ボソッと呟かれた。 えっ?喋った……しかも、4歳の子にドンマイと 言われてしまった。これって喜ぶべきか 落ち込むべきなのか悩んでしまった。 いや、落ち込むべきなのよね…やっぱり。 落ち込みながらも睦月君にケーキと飲み物を用意した。 ソファーの方にあるテーブルに置く。 「……ありがとう」 睦月君は、お礼を言ってくれた。 あ、また話してくれた!! そうすると無表情でケーキをパクパクと食べ始めた。 無言で無表情な姿で食べるから美味しいのか 判断はしにくいが。 「美味しい…?」 そう尋ねると私を見ながら コクリと2回連続で頷いてくれた。 えっと…1回が『YES』 2回が『凄くYES』という意味だったかしら? 「そう。美味しかったのなら良かったわ」 ニコッと笑顔で言った。しかし睦月君は、気にせずに 夢中でケーキを食べていた。 ジッと食べる姿を見てみるとやっぱり先生に似ている。 将来は、先生のような感じになるのかしら? 美形だから大きくなったらモテそうだけど 今と変わらず話すのが嫌いだったら、どうやって コミュニケーションを取って行くのか心配になった。
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