星と三日月に手をのばして

１．恋

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　それは、昨年の夏休み最終日のことだった。

　その日紀花は、図書委員として登校していた。仕事を終えて通用口まで来ると、ほのかにタバコの匂いが漂ってきた。禁煙が叫ばれているこのご時世、なぜこの学校では教職員の喫煙が許されているのかわからなかったが、この学校の教師の喫煙率は高かった。

　通用口と体育館の間の渡り廊下途中にあるドアを開けて外に出ると、体育館の壁に沿った奥側に灰皿が置かれてある。教師たちはみなそこでタバコを吸うのだ。