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世界や他人に嫉妬して、馬鹿にして、それで優位に立ったつもりでいて、自分を慰めていたはずだ。
優しさも痛みも自給自足。それに慣れてるはずなのに。
「――じゃあ……」
それまで黙っていた彼が静かに口を開いた。私の嗚咽の間に低い声が入り込む。
「僕が祝ってあげるよ」
「いや、いいよ、別に。どうせ今日限りだし」
それにそんな言葉、クサイし。欲しかった言葉だけど、この人からじゃない。
「だったら、明日も明後日も明々後日も会えばいい」
「それもボランティア?」
「そう、ボランティア。君の心を埋めるボランティア」
「うわー……気持ち悪い言い方」
恥ずかしげもなく言ってしまうのは嘘くさくて気味が悪い。でも、馬鹿らしくて笑える。
私は鼻をすすりながら笑った。すると、彼も空に向かって笑う。
「君は寂しいわけでしょ。そして僕は自己満足に浸りたい。お互いにそれを補えあえるわけで、なかなか好条件だと思わない?」
「まぁ、そうかもだけど……でもそれ、人としてどうなのよ」
不誠実だ、と言いかけて私は口をつぐむ。
数時間前まで散々、世界を否定しておいてよくもまぁ都合がいい。
「――あんた、悪い人だよね」
「僕は善人だよ。善人でいたいけど、それだけじゃあ満たされないから。人は結局、キレイ好きなだけなんだ」
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