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あぁ、それはなんとなく分かるかも。
その考え方は嫌いじゃない。むしろ心地いい。それに、夜風が煽ってくる。
「じゃあ、いいよ。その条件飲んでも」
私はゆっくりと覚悟を決めながら言った。あーあ、私も相当ゆがんでる。
空から目をそらして、チラリと隣を見てみれば、彼は目を開いて私を見ていた。驚いている。自分から提案しておいて。
「何よ……」
「いや、まさか飲むとは思わなかった……君って、頭ゆるい系の子?」
「まぁ、ゆるいんじゃない? 勉強もろくにしてないし」
「人生棒に振るのはまだ早いだろうに」
そんな大げさに憂いてくれなくていいんだけど。余計なお世話だ。
でも、
「こんな時間まで付き合わせたわけだしね……お詫びというかお礼というか」
「なんだよ、そんなの気にしなくていいのに」
彼の声は冷やかしながらも、どこか嬉しげだった。
「――さて、と」
私はようやく明日の世界に足を踏み入れた。もう今日は終わり。重すぎる今日が終わったのだから、来年のその日が来るのを拒みながら息をしよう。
深い夜の色は、まるで深海のよう。とっぷりの黒を吸い込むと、私は彼の前に立った。
「まぁ、どっかでまた会ったらでいいからさ、その時は私の心を埋めてよ」
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