午前0時、きみの影を追いかけて

2/15
40人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
 ところで、生まれた赤ちゃんパンダは動物園で大事に大事に育てられてみんなに愛でられるんだろうね。愛されるって、なんだか清らかなものに思えてくる。そして、その子は愛くるしいパンダだから大きくなってもかわいいまんま。生涯、愛されることを約束されてる。  まったく、この世界は反吐が出るほどに羨ましい。  持ってる服はそれほど高いものじゃないし、派手なものでもない。化粧もしてない。  薄い灰色のTシャツとデニムのスカート、髪は下ろしてるだけの姿で駅前をうろついているから、声を掛けてくる軟派なやつはいなかった。  午後11時半。こんな時間に、17歳の女の子が徘徊しているのは世間的によろしくないことだってのは知ってる。19歳は良くても、17歳はダメだという理屈もまぁ分かってはいる。  でもね、夜中に街をうろつく権利は17歳にだってあると思う……なーんて屁理屈こねて、しぶとくごねて、正当化させる。自分の中で。  いいじゃん、別に。今日くらいは許してよ。どこに行っても一人なんだからさ、どこに居たっていいじゃないか。 「女の子だから」、「危ないことに巻き込まれてしまう危険性がある」んだって、大人たちはそう言う。多様性がどうのこうの、性差をなくそうとか言ってるくせに、そういうときだけ都合よく女扱い。まぁ、実際に事件が起きてるから注意喚起するのは当然だけど。  自己責任だ。そういう目に遭っちゃったのは、もう自己責任でしかないよ。     
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!