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9月5日という日は、私にとって最高で最悪な日。最高なはずなのに、最悪に変わってしまった誕生日。それが終われば、また再スタートできる。私の誕生日は呪われているんだ。だから、一人で叫びたくもなる。
すっきりはしてないけど叫んだからか、溜まっていた鬱憤は収縮されていた。
「――あ、帰る気になった?」
私のため息を聴いたのか、高架下の外から男が顔を覗かせる。サラリとストレートの前髪が夜の中で揺れた。
「……まだいたんだね」
静かに悪態をついてやる。
いるのは分かっていた。私が座っているすぐ近くにいたから、時折様子を見ては何度か目を合わせたけど何も言わなかった。お互いに。
「なんで見ず知らずの私なんかに付き合うの?」
もう0時を過ぎている。私はよくてもこの人は大丈夫なのか。暇なのか。大体、素性が分からないから心配はしてないけど、物好きだなと不気味には思っている。
「うーん……」
彼の声音は笑うようで、なんだか軽い。考えている音じゃない。
「悪い大人から女の子を守るため……と言うのは冗談で、まぁ、自己満だよ」
「自己満……?」
思わぬ言葉に驚いた。そして、興味が湧く。
私はそろりと高架下から外へ顔を出した。すると、壁に持たれていた彼と目が合う。笑った目元がすっきりしていた。
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