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「どうしよう。あんまり音を立ててたら、誰かに見つかっちゃうかも。」
が、ハヤがこの一帯に立ち入っても誰一人としてすれ違うものはなかったし、そもそもこんな古い場所は誰も使っていないのかもしれない。
ハヤはその幼さゆえに、どうせ叱られてもどこ吹く風といったふうに流してしまうふてぶてしさがあった。
なにより、見つかり叱られてしまう恐怖心や警戒心より好奇心がまさって彼女を突き動かしている。
「誰かぁ!いませんかぁ!私は久瀬疾風って名前で、ハヤって呼ばれてまぁす!もしもーし!」
ばん、ばん、と何度も乱暴に扉を叩き、扉に向かって両手でメガホンを作り声を張り上げた。
しかし物音一つ帰っては来ず、あたりの静寂がよりいっそう大きく少女を囲い込む。
「誰もいないのなら、開けちゃいますからねぇっ」
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