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「はいき…?はいきって、どういうこと、お父さん。」
父親はハヤとハプトの肩を外に押し返すようにして、腰に下げたバイオロイド用の麻酔銃の青い銃身に手を伸ばした。娘の肩だけは離さなかった。
「あれは人類の失敗作なのに………これが効くとは思えんが、いいか、父さんが撃ったらすぐに走るんだぞ!」
「や、やめてお父さん!どうしてハチを撃つの!?ハチはいつもはああじゃないの、麻酔銃で死んじゃったら、いやだよ!」
ハヤは父親の銃を持つ太い腕にしがみついた。
かつてとてもおとなしかったハヤの”友”が、再び咆哮を上げた。
「………ハヤ、……………まさか、お前まさか。」
父親の額から、顎にかけて、ぽたぽたと汗が流れてハヤの両腕に落ちる。
「あれを起こしたのは、お前なのか。」
娘を抱く父の腕が、絶望に力が緩んだ。
「ハチはずっとハチだったわ!!今だってハチはハチだもの!!あそこに閉じ込められているより、外に出た方がずっといいわ!!」
迫り来る緑色の瞳を抱きとめようと、ハヤは父から離れ、腕を伸ばした。
バツッ、と、なにかが切れる音が響いたようにハヤは感じた。
途端に左腕じゅうにザグザグに走り抜ける、猛烈な熱。
ハチの綺麗なふたつの瞳が、眼前で爛々としている。
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