そして彼女は最後に嗤った。

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 ある時、僕に友人が出来た。  連携を学ぶため分けられたチームで一緒になった子で、彼は僕のことを“シロ”と呼んだ。僕の髪も肌も真っ白な色だったからという安易な理由だが――初めて名前らしい名前ができたことに、心底喜んだのを覚えている。 『シロはウサギみたいだよね!肌と髪は真っ白で、眼は赤くて!そういえばこの間成功した召喚魔法も真っ白だった!あんな凄いドラゴン見たことないよ…!』  彼はとても、とても純粋な少年だった。くるくる回る笑顔で自分の力を褒め称えたのである。 『施設で一番になった子は、此処から出して貰えるんだって。外に行けるんだって!ねえ、外の世界ってどんなところかな?此処よりずっと広くて、天井が高くて、空がとっても綺麗だって聞いたけど本当かな?空とか、海とか、教科書でしか見たことないもんね。すっごく気になると思わない?』 『そうだな、気になる』 『シロならきっと、一番になれるよ!だから、外の世界がどんなところか見てきて。そして出来たら…お手紙送って、教えてね。外の世界の綺麗なところ、空の色とか、海の色とか、鳥とか花とかたくさん!』 『何を言ってるんだ』  僕は一番になる。その為に頑張ってきたのだから。でも、一番というのは――一人でなくてもいいはずだった。 『テン、お前も一緒に行くんだ。お前も一番になれば、きっと二人で一緒に外に行けるぞ』  僕の言葉に、僕がテン、という渾名をつけた彼は眼を丸くして――次に破顔した。そうだね、そうなるといいね、と笑っていた。今でもその日のことは――昨日のように思い出せる。なのに。
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