序章

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序章

【孤高の天才バイオリニスト】 佐賀県立唐津城西(からつじょうせい)高等学校。通称を「城西(じょうせい)」といい、その名が示すとおり肥前(ひぜん)唐津藩の藩庁が置かれた唐津城の西隣に所在する公立高校である。 この学校に一人の天才バイオリニストがいた。 ー ーー ーーー ?「母さん、また瑠奈が金賞取ったんだってさ。新聞に載ってるぞ」 ?「へえ…。あの子、なかなかやるじゃない!」 佐賀県(さがけん)唐津市(からつし)のとある住宅街の一角。 ここにその天才バイオリニスト・西川(にしかわ)瑠奈(るな)が住んでいる。会話をしているのは彼女の両親だ。 父は煎茶を飲みながら朝刊の地域特集コーナーを読んでいる。そこには「唐津城西・西川さんまた金賞」の見出しと金色に輝くトロフィーを持って微笑んでいる女子高生の写真があった。 母「まさかあの瑠奈がここまで成長するとは…私にはちょっと想像できなかったわね」 父「ああ、俺もさ」 瑠奈は、かの国際バイオリニスト・堀越ゆみ子氏に憧れて10歳のときにバイオリンを始めた。 当初は人に聴かせられないほど恐ろしく下手なものだったが彼女の必死の努力がやがて実を結び、瞬く間に上達していった。 バイオリンを始めてわずか4年で地区大会入賞を果たすと翌年は金賞。一昨年は市大会銀賞、去年は金賞。そして今年、見事に県大会優勝を果たしたのだった。 父「瑠奈が俺に似なくて本当によかったよ」 母「ええ。お父さんは会社ではきちんと働いているようだけど、家だといつもぐうたらしてますからね」 父「ありゃ、一本とられちまったなあ…」 しっかり者の母と怠け者の父。二人がこの性格だったからこそ今の瑠奈があるのかもしれない。 そのとき、リビングのドアが開いてまだ寝ぼけ(まなこ)の少女が入ってきた。 両親「おはよう、瑠奈」 瑠奈「んぅ、おはよう…」 この金髪ショートボブの少女こそが「孤高の天才バイオリニスト」こと、西川瑠奈その人である。
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