序章

2/2
前へ
/38ページ
次へ
【西川三姉妹】 ここは西川邸の3階にある三姉妹専用の練習部屋。その名のとおり楽器の練習をするための部屋だ。 エアコン完備で防音対策も為されているので深夜であっても音漏れを気にすることなく練習できる。瑠奈はこの部屋が気に入っていた。 その練習部屋で瑠奈が次のコンクールに向けて練習していたところ、同じく楽器を嗜む2人の妹が「一緒に練習したい」と申し出たため瑠奈はこれを承諾。 現在、3人で練習をしているところだ。 瑠奈「芽琉、そこは“ミ”じゃなくて“ソ”よ。楽譜をよく見て…」 芽琉「姉さんこそテンポ速いんじゃない?」 瑠奈「いや、私はちゃんと合わせてーーー」 芽琉「だから『速い』っつってんだろが、妖怪ムネナシ!」 瑠奈「なんですってえ⁉︎」 理香「まあまあ二人とも落ち着いて・・・ね?」 いま、瑠奈と言い争いをしている薄水色の髪をした少女が次女の芽琉(める)で、それを(なだ)めている茶髪の少女が三女の理香(りか)だ。芽琉は金管楽器を、理香は鍵盤楽器を担当している。 芽琉は瑠奈と同じ唐津城西高校に通っており、理香は地元の市立西唐津中学校に通っている。ともに成績は優秀であった。 芽琉は高校一年生。 バイオリニストの姉に憧れ、中学で吹奏楽部に入ったのをきっかけに3年前からトランペットを始めた。 もともとそういう才能があったのだろう。彼女はあっという間に吹奏楽部で一番の演奏者になり、中学時代には一人でいくつもの賞を手にした。 人は彼女を「秀才トランペッター」と呼ぶ。 性格は明るく活発で西川家(あるいはクラス)のムードメーカー的存在だが、あまりに元気すぎて逆に空回りしてしまうこともよくある。 また、友達の勧めもあって髪を薄水色に染めたが成績優秀で生活態度も良好なため学校から特別に許可されている。本人も『黒髪より断然見映えがいい』と気に入っているようだ。 理香は中学三年生。 もともと楽器に触れることが好きだったこともあって4歳から本格的にピアノを習い始めた。 6歳で地元のピアノコンクールで優勝して以降、調子もうなぎ登り……かと思いきやなかなか結果が出ず、一時は心が折れそうになった。 それでも三人の中で一番の努力家である彼女が必死で練習を重ねた結果、10歳のとき市大会入賞を果たしてようやく才能が開花。 13歳で地区大会銅賞、去年は地区大会金賞に輝いた。今年は県大会で銀賞を獲得するなど確実に力を着けてきているようだ。 鍵盤楽器なら何でも弾けるためか、人からは「鍵盤楽器のスペシャリスト」と呼ばれている。 明るくさばさばした性格ではあるものの、2人の姉に比べ地味な印象を持たれやすいのが悩みの種である。 だが理香は話術に長けており、とりわけ落ち込んでいる人を励ますのが得意であるため、瑠奈や芽琉と同様に西川家やクラスにとって必要不可欠な存在となっていた。 瑠奈「はあ……。芽琉はいいわね、私の一番の悩みである胸の大きさを馬鹿にできるくらい胸があって」 芽琉「姉さん、冗談だってば!本気にしないで⁉︎」 そのくらい分かってるわよ、と瑠奈が言うと芽琉は安堵の表情を見せた。 理香「ルナ(ねえ)、メル(ねえ)。お母さんが『ご飯だから一階(した)に下りてきなさい』だってよ」 先に一階へ下りていた理香が再び上がってきてそう告げた。 瑠奈&芽琉「「分かった」」 理香に続いて二人も一階に下りていった。 ーーーこれから始まる物語はこの陽気な三姉妹の話しである。     
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加