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【バンド結成】
芽琉「……なかなか来ないね」
理香「うん……」
土曜日。
三姉妹はイオン唐津ショッピングセンター(通称:唐津のイオン)にいた。メンバー入りを志願してきた女子大生と会うためである。
時刻は15時40分。約束の時間からもう40分も過ぎている。テナントの一つであるミスタードーナツで待ち合わせているのだが、ちょうどおやつの時間帯ということもあって飲食スペースは満席に近かった。
瑠奈「待ち人来たらず…か。芽琉、本当にここで待ち合わせなの?」
芽琉はスマートフォンを操作し、瑠奈にツイッターのDMでのやり取りを見せた。
瑠奈「“明日の15時にイオンのミスタードーナツですね?了解しました!”、“すみません!用事が長引いて遅れそうなので店内でお待ちいただけないでしょうか?すぐ行きます!”・・・うん、確かにそうみたいね」
理香「お腹空いたー!ねえ、もうこれ食べていいでしょ?」
理香が買っておいたドーナツに手を伸ばそうとしたのを見て、瑠奈は慌ててそれを取り上げる。
瑠奈「まだ駄目。これは河原さんが来てから一緒に食べるものよ」
理香「ええー・・・そ、そんなあ!」(ガクッ)
理香がうなだれたときだった。
?「すみません、西川さんですか?」
三人が振り向くと焦げ茶色のコートを着た小柄な女性が立っていた。
瑠奈「はい、そうですが…?」
里穂「よかったあ!私、ボーカルに応募した河原里穂です。遅くなって本当にすみません!」
里穂は深々と頭を下げた。
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軽く自己紹介をしたのち、芽琉がバンド結成の経緯を説明した。
芽琉「―――そんなわけで私たちはこの度、ユニットを結成することにしたんです」
里穂「なるほど、そういうことだったのね。あなたたちのことはテレビや新聞で知っているから、“ボーカルを募集します”なんてツイートを見たときは目を疑ったわ」
理香「そういえばメル姉から聞いたんだけどさ、里穂さんは大学でアカペラ部に入ってるんだって?」
瑠奈「理香、ちゃんと敬語を使いなさい!」
里穂「別にいいわよ」
理香は年上の里穂にタメ口で話しているが、彼女はさほど気にしていないようだ。
里穂「ええ。サークルではソプラノを担当させてもらってるわ。まあ、そんなに上手くはないけどね」
瑠奈「じゃあ里穂さんはアカペラ部のホープなんですね!」
里穂「ホープでも何でもないって。ただ歌が好きなだけよ」
芽琉「その謙遜が一流の証しですよ!よし、ボーカルは里穂さんに決定!」
瑠奈&理香「異議なーし!」
里穂「ぇあ⁉︎・・・ふふふ、ありがとね」
ユニットへの参入が強引に決まってやや面食らった里穂だったが、地元の有名人である西川三姉妹との競演は願ってもないことだったので内心とても嬉しかった。
里穂「そうと決まればユニット名をつけなきゃね。何にしようか?」
理香「と言われても、なかなかすぐには…」
芽琉「名前をつけないことには始まらないからさ、適当なものでいいんじゃない?例えば……あっ、そうだ!西川の“N”と河原の“K”、イタリア語で四重奏を意味する“カルテット”で『NKカルテット』っていうのはどうかな?」
瑠奈「とりあえずの名前にしてはなかなかいいわね」
理香「私も賛成!」
里穂「よし、じゃあそれでいこう。みんな、これからよろしくね!」
三姉妹「はい、よろしくお願いします‼︎」
こうして女学生バンド「NKカルテット」は誕生したのだった。
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