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【新体制】
唐津市と福岡市の間に位置する福岡県糸島市。
九州一の大都会・福岡市のベッドタウンとして近年注目が集まるこの街に一人の少女が住んでいた。名前を原澤麻耶といい、福岡市内の大学に通う女子大生である。
麻耶「はあ、疲れた…」
家に帰ってきた麻耶は自室のベッドに寝転がるとおもむろにiPhoneを取り出した。
麻耶(大学自体は楽しいんやけど休日は何もやることがないけんつまらんし…。何か面白いことないかいな?)
ツイッターを何気なく見ていたとき、あるツイートが目に留まった。
麻耶「ん、『ボーカルメンバー募集中』…?」
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芽琉「姉さん、NKカルテットへの参加申し込みがきたよ!」
芽琉がそう二人に言ったのは12月のある晴れた日曜日、三姉妹揃って福岡有数の人気観光スポット「キャナルシティ博多」で買い物を楽しんでいたときだった。
バンド結成後、何度か4人で練習していると『低音域を歌える人が一人ほしい』と里穂から要望があり、芽琉が再度ツイッターで加入者を募集していたのだ。
理香「えっ!もう来たの⁉︎」
芽琉「うん、原澤さんっていう糸島の人。歌が三度の飯より好きなんだってさ」
瑠奈「あら、ぴったりじゃない。低音パートは歌えるの?」
芽琉「さあ?そこまで書かれてないから分かんない」
理香「一度会って話してみたら?」
芽琉「うん、そうしよっか!」
芽琉は早速、投稿者へ返信を送った。
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それから一週間後の日曜日。
NKカルテットの4人は糸島市内の喫茶店で麻耶と面接を行った。
麻耶「あはは…。やっぱり面談とか面接って何度やっても緊張しますね」
芽琉「麻耶さん、そんな固くならなくていいんですよ。企業の面接じゃないんだし」
めいめいの自己紹介は終わったものの、麻耶は緊張からかまだ少し身を強張らせていた。
麻耶「あっ、確かにそうですね!」
里穂「そうそう、楽にして下さい。あと敬語も使わなくていいですから」
麻耶「本当に?じゃあそげんさせてもらうね!」
理香「わあ、博多弁だ!」
瑠奈「ところで歌がお好きとのことですが、普段はどんな歌を歌われるんですか?」
瑠奈の質問に麻耶はひときわ目を輝かせた。
麻耶「何でも歌うよ。J-POPは流行りのもんは知らんけどちょっと前のやったら分かるし、あとは演歌でしょ?それに唱歌に童謡に・・・。」
里穂「すごい!何でもご存じなんですね‼︎」
麻耶「いやいや、そんな…。下手の横好きなだけたい」
理香「ねえ、低いパートは歌えるの?」
麻耶「うん、音程もそこまでぶれんと思う」
芽琉「はい採用決定ー!」
理香「相変わらず早いなオイ!」
即決した芽琉に理香が素早くツッコミをいれる。
瑠奈「こうして巡り会えたのも何かの縁ですもんね。麻耶さん、よろしくお願いします」
麻耶「いえいえ、こちらこそ」
里穂「よかったわね、これでNKカルテット・・・あっ!」
麻耶「どげんしたと?」
里穂「メンバーが5人に増えたから、もうカルテットじゃなくなった!」
全員「あっ・・・。」
しばし静寂が訪れる。
瑠奈「もともと仮の名前だったことをすっかり忘れてしまってたわ。新しい名前を考えないと」
理香「ねえねえ、いま思いついたんだけど『虹色ぱれっと』なんてどう?」
里穂「虹色ぱれっと?」
理香「うん。私たちの個性という名のパレットから虹色の音声を描きだす……みたいなイメージ?」
瑠奈「理香にしてはなかなかいいネーミングセンスね」
梨香「ルナ姉、『理香にしては』って酷くない⁉︎」
瑠奈「冗談よ。皆さんはどうですか?」
芽琉「気に入った!」
麻耶「私も!」
里穂「言うことなしね」
すると瑠奈が笑顔で言った。
瑠奈「それじゃあ本日、12月20日はNKカルテット改め“虹色ぱれっと”の正式発足日ということで今日が本当の始まりです。皆さん、これからよろしくお願いします!」
瑠奈以外の4人「はい!」
かくして、女学生バンド“NKカルテット”は「虹色ぱれっと」として新たなスタートを切ることとなった。
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