2人が本棚に入れています
本棚に追加
【新事実】
里穂「ーーーということが先日あったんですよ!」
ここは福岡市に所在する福岡愛豊大学。里穂と麻耶が通う公立大学で、開学時に校地が愛宕と豊浜に跨っていたことがその名の由来である。
里穂が話しをしているのは学内の大学生協に勤める白岩美雪。現在、青木の家へ行ったことを報告しているところだ。
白岩「へえ、そんなことがあったんだねぇ!」
間延びした甲高い声で白岩が言った。
白岩「里穂ちゃん、なんか最近ますますイキイキしてきたよねぇ。毎日楽しいでしょう?」
里穂「はい。ここ半年ぐらいで色んなことが起こりすぎて頭のほうが追いついていないというか…。とにかくそんな感じですね」
白岩「ふふ、よかったぁ」
白岩は目を細め、にっこり笑った。
白岩「そういえばさっき『ようやくバンド活動が本格的に始まった気がする』って言ってたよねぇ?」
里穂「ええ」
白岩「実はね、福岡市内でコンサートを開いてくれる人を募集しているところがあるらしいよぉ?」
里穂「そうなんですか!?」
白岩「うん、私も人づてに聞いただけだから確証はないんだけどね。たしか名前はーーー」
ー
ーー
ーーー
瑠奈「その“福岡おひさま倶楽部”という団体がコンサートの開催者を募集しているんですか?」
里穂「うん、大学生協の人がそう言ってた」
数日後、里穂は西川邸で開かれた定例会でメンバーに事の顛末を報告した。
麻耶「そういえば里穂ちゃんはどこの大学に通っとうと?」
里穂「福岡愛豊大学です」
麻耶「え、私と同じやん!」
里穂「本当ですか!?」
里穂が驚きの声を上げた。
麻耶「うん。大学生協があるってことは里穂ちゃん百キャンやろ?私は豊キャン!」
里穂「豊キャンですか、麻耶さんって理系なんですね!」
芽琉「えーっと、お二人は同じ大学だったってことですか?」
話しについていけなくなった芽琉が確認する。
麻耶「そうなんよ!私たちが通いよる大学には文学部がある百道浜キャンパスと理学部がある豊浜キャンパスの2つがあるっちゃん。さっきから言いよる『百キャン』とか『豊キャン』ってのはキャンパスの通称ね」
瑠奈「ああ、そういうことなんですね」
里穂「でも同じ大学なのに通学中に会ったことないですね。もしかして通学は車ですか?」
麻耶「うん。やけんやない?」
里穂「なるほど!私は電車です」
麻耶「そうなんや!私も電車にしようかな?そしたら時間が合えば里穂ちゃんと通えるし」
里穂「本当ですか!? やったあ!」
瑠奈「あのー、盛り上がっているところ恐縮ですがそろそろ話しを元に戻してもらっていいですか?」
瑠奈がおずおずと二人に呼びかけた。
麻耶「ごめんごめん!ええと…そうそう、“福岡おひさま倶楽部”やったね!」
里穂「はい。せっかく白岩さんが教えて下さったのでせめてコンタクトだけでも取れないものかと…」
理香「ねえ、その人が言っていたのってこれじゃない?」
理香がスマホをこちらに向けながら言った。
芽琉「どれどれ?『一般社団法人 福岡おひさま倶楽部』…ふーん、地域のボランティア団体みたいなところのようね。それで例の募集案件というのは?」
理香が「おしらせ」と書いてあるリンクをタップした。
瑠奈「『福岡市東区にてミニコンサートの開催者を募集しています』…」
そこには
「9月に福岡市東区千早の“なみきスクエア”で70代以上を対象とした1時間程度のミニコンサートを開いて頂ける団体を募集します。謝礼は交通費+5000円。日時など詳細は要相談」
といった内容が書いてあった。
理香「私たちまだ駆け出しにも満たないぐらいの新人バンドだから、交通費とは別に5000円ももらえるのはありがたいよねー」
芽琉「そうよね。それは大きいかも…」
里穂「楽譜さえあればどんな曲でも演奏できるしね」
瑠奈「・・・なるほど、面白そうですね。この話し、乗ってみましょうか」
要項を一通り読んだ瑠奈が言った。
芽琉「善は急げだよ、姉さん!」
里穂「現状を喩えるなら『鉄は熱いうちに打て』のほうが合っているような…。ところで瑠奈ちゃん、募集期間はいつまで?」
瑠奈「ええと…えっ、今日まで!?」
麻耶「ぎりぎりセーフやったね!」
瑠奈「ええ、本当に…」
芽琉「申し込みは電話でするみたいだね」
瑠奈「そうね。早速電話してみましょう」
ーーー瑠奈はそう言うと「福岡おひさま倶楽部」に電話をかけた。
最初のコメントを投稿しよう!