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「誰なの!」  早出出勤で業務に邁進していた私はそう叫ばずにはいられなかった。  身長190センチ越えの巨体の大男、それも黒装束の怪しい忍者を社内で見た記憶はないからだ。良くて泥棒か産業スパイ、最悪の場合は快楽殺人者かもしれない。  そっと机の陰に隠れることも考えたが、なぜか男に声をかけてしまった。  ――なぜって、男がコピー機の上のスペースに張り紙を張っていたから! 「む……」  男が一瞬こちらを向くが、すぐに私への興味は失ったようだ。男はまた黙々とコピー機の上に紙を貼り続ける作業に戻った。  一瞬目が合ったような気がしてはっとしてしまったけれど、その後に思いきり無視された。  それにいら立ってしまった。哀れ私は迂闊にも再び叫んでしまった。 「張り紙をテープで貼ると――壁紙が傷つくでしょう!」  自分でも「なんて頓珍漢なことを……」と思ったが、飛び出た言葉はもう戻らない。  男は一瞬ピクリと反応して、その後くるりとこちらを振り向いた。  ――あ、これはいけないやつでは――  反射的にそう思ったが、後悔先に立たず。     
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