第1章

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 彼女はずっとあそこで待っていたのかもしれない。  1週間、缶詰状態でうけた研修で疲れ切った僕を、ずっと待っていたのかもしれない。  ただ一言、「ごめんなさい」を言うために。  自分の夢を追いかけるために、何も言わずに当時の彼を捨てた自分をずっと責め立てながら。 「ごめんなさい」を告げた彼女は、心に刺さっていた1本の長く太い釘を、やっと抜くことができ、やっと自分の行くべき場所へ行くことができたのかもしれない。  次の日、仕事が休みだった僕はもう一度、彼女と会ったサービスエリアへ向かった。  昼過ぎのサービスエリアは休憩を取る人たちで賑わっており、あの日の光景とは全く違っていた。  サービスエリアへ着いた僕は車を降りて、彼女と話したフードコートへ向かった。  食事時ではないフードコートはがらんとしていたが、数人の客がいて休憩していた。  僕はコーヒーを注文し、それとともに彼女と話したテーブルに着いた。  そして星の砂をテーブルの上に置いた。  彼女は果たして幸せだったのだろうか?  夢を追って上京し、たくさんのひどい仕打ちを受け、夢叶わず単身沖縄へ移住し、そこで誰にも看取られることなく死んでいったその人生を思うと、同情せずにはいられなかった。  過去に自分が捨てられた惨めさなんて、これっぽっちもなかった。  不器用だけど、自分に真っすぐな生き方。  僕には到底真似のできない人生を一気に進み、やり残すことなく閉じた生涯。  彼女は彼女の道を全うし、自分1人で人生の荒波に立ち向かった。  そこには彼女の生き様があった。  幸せかどうかは彼女自身が決めることだ。  僕はコーヒーを一気に飲み干し、車へと戻った。  そしてアクセルを踏んで、自宅へと急いだ。  僕は生きてる。  そしてこれからも生きていく。  僕は僕の進むべき道がある。  大それたことはできないけど、彼女がそうしたように、僕は僕の道を精一杯全力で生きていかなければ彼女に笑われる気がして、アクセルを更に踏み込んだ。  愛する家族のもとへ帰るために。
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