第1章

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 「僕にも見せてよ」  っていわれたので、カーテンを大きくひらいた。  譲次さんはまぶしそうに目を細めて、  「積もったねえ、たった一晩で」  っていった。  あたしのしたことでもないくせに、あたしはへんにはずかしくなって、カーテンをごしょごしょいじりながら、  「うん」  っていった。  譲次さんはうでをさすった。  「えりすごめん、僕のフリース取ってくれる?」  あたしは全そく力でクローゼットに行って、譲次さんの青いフリースをとってきた。  かたにかけたら、譲次さんはにこっとして、  「ありがとう。なら、もう行っといでよ。こっちの窓から直接、外へ出られるんだろ」  っていった。でもあたしはやっぱりはずかしくって、カーテンを体に巻きつけて、  「ううん、いい」  ぐるんぐるんって左右にまわった。  譲次さんはばかな子どもを見るみたいな目であたしを見て、  「いいや、気が済むまで雪で遊んでおいで。気がじゅうぶんに済んでから、朝ごはんにしよう。さもないとえりすはいつまでも上の空だろうしね。僕は、昨日みたいに熱々スープを鼻につっこまれたくないよ、さあ」  っていった。  あたしはぐるんぐるんをやめた。  ずっとベッドにいてつまんないせいか、譲次さんはちょっとこのごろいじわるっぽいって思った。  そりゃあたしは、きのうのばんごはんのとき、スプーンで食べさせてあげようとしてスープをはねかした。でも、それはほんのちょびっとだったし、そんなにあつあつでもなかった。譲次さんだって「なんともないよ」って、いった。  それなのに、次の日になってそんなふうにいうなんて、ちょっとひどいと思った。  あたしは巻きついたまま下や横を見ながら、  「じゃあ、ちょっとだけ、外行ってこようかな……」  そこでさっとカーテンからぬけ出て、口にキスしようとした。譲次さんはすばやく頭をそらせてよけた。からぶりになって、あたしはふとんに顔からつっこんだ。  譲次さんはおこった声で、  「だめだって、うつるよ」  っていった。  あたしはふとんから起きて、首をぐにゃぐにゃさせた。つんとした鼻をごしごしこすって、  「うつるなら、もうとっくだよ。譲次さん、ひどい」  っていった。  そしたら譲次さんは首をかしげて、
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