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もっとにこにこうなずいて、譲次さんはあたしにどんどんしみこんでいく。あたしのぜんぶ、かみの毛の一本一本から足の小指のつめの先まで、ぜんぶをつつんでいく。
「でもね、鴎さんったらひどいん、だよ。譲次さんが死んじゃった、とかいうの……どうしてわかんないのかな……ううん、あたしそんなこといわない、ちっともおこってない。だってあの子……あの子すごくかわいそう、なんだもん……あたしや丈一さんがちゃんと好きなこと、ちっともわかんないの……あの子のママだってきっと……まちがったら、おちついてやり直せはいいのにね……あん」
もうだめだ。気持ちよくってあったかくって、あたしの肉もほねもかみもつめもどろどろにとろけて金色のお湯になる。時間も、ものの形も、どこにいるのかも、なにもかもわかんない。
今、あたしと譲次さんは、完全なひとつだ。
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