8人が本棚に入れています
本棚に追加
「これは秘密だよ、だれにもいってはだめだよ」
っていいながら、あたしの体にさわりだす。あちこちいじったり、写しんをとったりする。
「相変わらずいやらしい女だな、こいつが待ちきれないか」
体じゅうに汗をかいてはあはあいいながら、先生は一生けん命動く。やがてみじかくうめいてふるえる。あたしのおなかに、あたたかいものがかかる。
くたびれるのはわかるけど、おへそに入った分もちゃんとふいてほしいなあ、ってあたしは思う。でもティッシュでざつにふくだけで、いつものとおり先生はとなりでねてしまう。
先生のね息がすうすうつづくまで待って、あたしはゆっくり起き上がる。
そうっとわきのシーツをはがして、ベッドの中に手をつっこむ。おしこんであったクスリがゆかに落っこちて、ぱらん、ぱらんって音がするけど、先生はぐっすりねたままだ。
指が冷たくて重たいものをつきとめる。
両手に持ち直して、あたしはふうっと細く長く息をつく。
むねがわくわくして、笑っちゃいそう。
先生のせ中のあなを、あたしはわくわく見つめる。
変化はすぐにはじまる。
あなから、金色の光があふれだす。暗いへやの中だからよけいくっきり見える。
あなは細い金色の線になって、首すじからおしりまでのびて、熊谷先生のせ中はぱかっ、とまっぷたつにわれる。夏の明け方、茶色いセミの子どもから、まっ白なセミの大人が出てくるのとおんなじだ。
われた中から、まぶしい金色の光があふれる。光はなつかしいやさしいきれいな顔の形になった。
すぐにあたしを見つけて、
「えりす」
って口を動かす。いつだって笑っている。
あたしはむちゅうになってだきつく。だきついたところから金色のお湯みたいに、譲次さんはどんどんあたしにしみこんでくる。あったかくて気持ちがよくって、すぐにでも気ぜつしちゃいそうだ。
でも気ぜつしたらもったいないから、あたしはひっきりなしにしゃべる。
「今日ね、鴎さんが来たよ。あの子あいかわらず、おかしなことばっかしゃべって、とってもおもしろかった。あ、丈一さんのけががなおったって。よかった、丈一さん、もうこわいことないね……あたし、あの人好き。きっときっと、しあわせになってほしい」
最初のコメントを投稿しよう!