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僕は歌が嫌いだった 街中の雑踏のような けばけばしい歌が嫌いだった 厳粛な教会のような よそよそしい歌が嫌いだった でも 僕が嬉しくて 空を見上げているとき 君は一緒に 歌って踊ってくれた 僕が苦しくて 地面を見つめているとき 君はそっと優しい歌を 口ずさんでくれた 僕はほんの少しだけ 歌が好きになった 歌と 歌を歌う人が好きになった だけど君はある日突然  蜃気楼のように姿を消してしまった 僕に忘れられない大切な思い出を残して まるで初めからそこにいなかったかのように すっと姿を消してしまった だから今度は僕が歌を紡ぐんだ 君が残してくれた思い出をなかったことにしたくないから そうして歌を紡ぎ続けていれば 君がまたひょっこり現れてくれる気がするから
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