落語家の煙

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河川敷に響く人々の声を聞きながら、まだ慣れないランドセルの位置を気にしながら通学路を歩き、家にたどり着く。 琉太が生まれる一年前に建てられた家はまだ、真新しいが琉太にとっての家はこの家でしかない。 ただいまと声をあげて居間の扉を開ける。 ばあちゃんが、ソファに座ってテレビを見ていた。 「ああ……。琉太、おかえり……」 ばあちゃんが静かに声を返した。 どこかしら元気のないばあちゃん。 「どうしたの?」 つい不安になりそう琉太は聞いた。 「ああ。ばあちゃんの好きな落語家さんがね……」 言われて琉太はテレビに視線を移すと、琉太も知っている落語家が亡くなったというニュースが流れていた。 「そうなんだ……」 そういう時にどんな言葉をかければいいのか、うまい言葉が思い当たるほどの経験値は琉太にはない。 父や母なら、うまく話を合わせるかも知らないが、その落語家をテレビで見ていた時も家族の好みに合わせて一緒に見ていただけなのだから、思い出話をできるほどのネタも琉太にはなかった。 「あんまり落ち込まないでね」 言葉に詰まったが、何とかそう言うとばあちゃんは力なく笑う。
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