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「ありがとうね。ばあちゃんが若い頃からテレビで見ていた人だから、少しショックでね。さぁ、ちゃんと宿題しなさいね」
「うん……」
話を広げることも出来ずに琉太は自分の部屋に行き、算数と国語の宿題をやり始める。
網戸から時おり侵入してくる風は少しだけ温く初夏であることを教えてくれる。
漢字の書き取りをしながら、どうして人は死んでしまうのだろうかとつい考えてしまう。
いつか科学が進化して、人が死ななくなる日は来るのだろうかとか、大ばあちゃんに再び会える日は来るのだろうかとか、考えながら宿題をしていたら、いつの間にか全て終わっていた。
明日、必要な教科書をランドセルに詰めてから、琉太は学習机の前の窓から見える町の風景を眺めた。
居間に行って、ばあちゃんとテレビを見ても、落語家のニュースばかりを見ることになりそうなので、結局、日が暮れてしまうまで外を眺めていた。
時計は十八時を過ぎており、父も母も帰宅している時刻。
あまり部屋にこもっていても暇を持て余すので結局、居間へと向かう。
ばあちゃんと居間と続いた台所で母は夕飯の支度をしながらも、落語家の亡くなったニュースを気にしていた。
父もじっとテレビにかじりついている。
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