胎児の煙

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大ばあちゃんの死を悲しんでばかりいた琉太だが、大地の気遣いから少しは気持ちは上向きになったが、生来の性格が大人しいために見た目にはあまり変わらなかった。 だが、よく笑うようになり学校では友達と当たり前に他愛ない話が出来る。 河川敷の夕闇を眺めるだけで泣きそうになることも少なくなった。 大ばあちゃんのことを忘れたわけではなく、大ばあちゃんに元気でいるよと伝えるには元気でいるしかないのだ。 もともと活発ではないのだから、琉太がはしゃぎ回ることは少なく、時間があれば読書をしていることが多い。 琉太にとっての楽しみはゲームでも漫画でもなく、読書だった。 体が弱い訳でもないが、琉太の感性を最も刺激するのが読書なのだ。 小学校にあがる前から絵本が好きであったが、小学校にあがって漢字や言葉の意味の調べ方を知ってから、読むものは絵本から小説へと変わっていった。 幼稚園の頃からの仲良しである亮も本が好きで、琉太によく本を貸してくれた。 琉太の部屋に入学と同時に置かれた空っぽの本棚は少しずつ本が増えていく。 近所の大人たちは子供らしくないと琉太を評価するが、家族は別段気にしていない。
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