胎児の煙

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当たり前に授業を受けて、当たり前に給食を食べて、当たり前に放課後がくる。 その当たり前の最中にも誰かが死ぬ。 生まれることもできない命が終わる。 ぼうっと通学路を歩いていると琉太の目の前に立ちはだかる人がいた。 笑顔を見せてくるその人は大地だ。 「大地……」 「着いてきて。琉太も気になっているだろう?」 何が?とは言わなかった。言えなかった。 大地が何を言っているかは想像がつく。 落語家のときもそうだった。 不思議ではあるが、幽霊とはそんなものなのかも知れない。 大地は幽霊のわりには元気ではあるが、それは先入観なのだろう。 大地は、幽霊であるというのに普通に人の流れに乗る。 本当に幽霊なのか疑いたくなるほど、街に自然に溶け込む。 大地は後ろの琉太を振り返らず進み、止まる。 「ここだよ」 琉太は、その建物を見上げる。 街で一番大きな大学病院。 「行くよ」 琉太の返事を待たずに大地は建物に入る。 また、人込みを普通に歩く大地。 「琉太にも見えるようにするから」 大地が右手をあげると琉太が見ていた光景が変わる。 たった今まで見ていた病院内の光景に何かしら浮いているものが多数見える。
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