胎児の煙

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よく目をこらして見るとそれは赤ちゃんだった。 「生まれることも出来なかった赤ちゃんも未練ってあるんだよ。この子たち、みんなの未練が僕が晴らす訳じゃないけど、考えてくれ。何だと思う?」 琉太は、奥歯を噛みしめ、拳を握る。 「分かんないよ。勝手な大人の都合で殺される赤ちゃんの未練なんて……。きっと生きたいとか生まれたいでしょ?無理じゃん……」 「うん。無理だ。だが無理じゃない。生きていけないと分かっても晴らせる未練がこの子たちにはあるんだ」 ふわふわと浮く赤ちゃんの一人を大地が抱き寄せる。 そのまま琉太へと渡す。 「この子たちも煙だから、琉太に触ることはできないけど抱いてあげて」 琉太は、言われて手を伸ばす、赤ちゃんは琉太の腕に収まり、琉太に向けて笑顔を向けたように感じた。 ふわりと赤ちゃんは消える。 「え?未練……、晴らせたの?」 大地がこくりと頷いた。 「生きて生まれることが出来なかった子でもね、親は最後に抱いてくれることもある。だけどね、それ以外の人に抱かれることは、ほとんどないんだ。生まれずにあちらに行く子たちは、親以外の人に抱かれてみたいと思う子がほとんどなんだ。その一人を今、琉太が未練を晴らしたんだよ」 そう琉太に教えてくれる大地が消えていく。 「琉太、覚えておいて。生まれることができなくても未練はあるんだ」 そう言って大地は消えた。
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