社会人の煙

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「ただいま」 琉太の言葉に家族が全員振り返る。 「ちょっと!琉太!泥だらけじゃない!お風呂行きなさい!」 母に言われて、そのまま浴室に向かう。 その琉太の耳にニュースキャスターの『過労死』という言葉が聞こえてきたが、琉太にその言葉の意味は分からない。 服を脱いで浴室に入り、まずシャワーからのお湯を浴びて頭を洗う。 大ばあちゃんが亡くなる前は、家族の誰かと一緒にお風呂に入っていたが、大ばあちゃんが亡くなってからは早く大人になりたいという思いから一人でお風呂に入るようになった。 タオルでボディソープを泡立てて体をこする。 頭と体を綺麗にしてから湯船に浸かる。 湯船に浸かりながら、亮が早く二輪車に乗れるようにはどうすればいいかを考える。 ぼうっと天井を眺めていると、天井から一滴水滴が顔に落ちた。 「冷たい!」 つい叫んだが、浴室には琉太一人だけ。 のぼせ気味になっているのに気付き、湯船から上がり再びボディソープで体を軽く洗いかけ湯をして、浴室を出る。 脱衣場には琉太の寝間着と下着がすでに用意されており、琉太は頭と体を拭いてからそれを身につける。 リビングに戻ると父だけがテレビを見ている。
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