料理人の煙

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バスタオルで頭をくしゃくしゃと拭いて、体を拭う。 リビングに戻ると父がテレビをのんびりと見ている。 テレビの画面にはニュース。 この時間は、母と祖母は夕飯の支度の時間だ。 「今日のご飯、何かな?」 「親子丼らしいよ」 「やった!」 母がばあちゃんに習い、ばあちゃんが大ばあちゃんに習って味を味を受け継いでいる料理。 小さなことの塊でも大ばあちゃんが生きた証はそこかしこにある。 「琉太、親子丼好きだもんな」 「父さんだって好きじゃん!」 「まあ、そうだな」 父と顔を合わせてにししと笑う琉太。 父がくしゃりと琉太の頭を撫でた。 「宿題はちゃんとしろよ」 「親子丼食べてからね」 体の小さな琉太は沢山は食べられないが、それでも充分だ。 父の丼より小ぶりの器に盛られた親子丼をぺろりと平らげたあと、琉太は自分の部屋に行き宿題に手をつける。 勉強は得意ではないが、やらないと父や母が隣について宿題をやらせるため、いつしか自分からやるようになった。 親友の亮は勉強が出来るから負けたくはない。 じっくり時間をかけて宿題を終えて、いったんリビングに行って家族におやすみを告げてまた戻る。
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