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琉太の胸が鷲掴まれたようにどくんと激しく鳴った。
「焼くの?」
「ああ。だからちゃんと大ばあちゃんにお別れするんだよ」
大ばあちゃんの棺に花が入れられ、棺に釘が打たれる。
小窓から大ばあちゃんの顔をしっかりと焼き付けたあと、棺は扉の奥へと入っていった。
琉太の母が涙を流していた。
琉太のばあちゃんが涙を流していた。
琉太は、唇を噛んで下を向いていた。
「琉太、外に行くか?」
「……うん」
父に促されて琉太は父と一緒に外に行く。
外から火葬場を眺めると高い煙突から煙が静かに昇っていた。
「あれが大ばあちゃんの煙だよ。空に昇って行くんだ」
琉太は、父と一緒に煙を眺めていたが、父が突然に目を拭った。
「あはは。父さんも泣けてきてしまう。中に入るか?」
「ううん。僕、もう少し見てる」
「そうか。遠くに行くなよ。父さんは中にいるから」
父が火葬場の中に入っても琉太は煙を眺めていた。
煙の流れる先を目で追う。
「あれ?」
空に昇るはずの煙は、近くの農園の横の林に向かう。
風も吹いていないのに横に流れるのだ。
「どうして?」
琉太の足はその林に向かう。
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