大ばあちゃんの煙

6/9
前へ
/122ページ
次へ
琉太の胸が鷲掴まれたようにどくんと激しく鳴った。 「焼くの?」 「ああ。だからちゃんと大ばあちゃんにお別れするんだよ」 大ばあちゃんの棺に花が入れられ、棺に釘が打たれる。 小窓から大ばあちゃんの顔をしっかりと焼き付けたあと、棺は扉の奥へと入っていった。 琉太の母が涙を流していた。 琉太のばあちゃんが涙を流していた。 琉太は、唇を噛んで下を向いていた。 「琉太、外に行くか?」 「……うん」 父に促されて琉太は父と一緒に外に行く。 外から火葬場を眺めると高い煙突から煙が静かに昇っていた。 「あれが大ばあちゃんの煙だよ。空に昇って行くんだ」 琉太は、父と一緒に煙を眺めていたが、父が突然に目を拭った。 「あはは。父さんも泣けてきてしまう。中に入るか?」 「ううん。僕、もう少し見てる」 「そうか。遠くに行くなよ。父さんは中にいるから」 父が火葬場の中に入っても琉太は煙を眺めていた。 煙の流れる先を目で追う。 「あれ?」 空に昇るはずの煙は、近くの農園の横の林に向かう。 風も吹いていないのに横に流れるのだ。 「どうして?」 琉太の足はその林に向かう。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加