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その煙が集まり、それは琉太がよく見知った形となる。
「大ばあちゃん!」
大ばあちゃんは、琉太に向けて笑顔を向けて琉太へと歩いてくる。
そっと伸ばした手で琉太を抱き締めようとした。
琉太は、それに応えようと手を伸ばす。
だが、琉太の手は大ばあちゃんをすり抜ける。
それでも、大ばあちゃんが自分を抱き締めてくれたのだと分かる琉太の目に涙が滲む。
「大ばあちゃん!大好き!」
琉太がそう叫ぶと大ばあちゃんは、笑顔を見せたまま、ふわりと消えた。
「ありがとう琉太。君のおかげで彼女の未練が果たせたよ」
琉太の手が空を泳いでいた最中、大地が笑顔をたたえてそう言った。
「僕は煙となった魂の未練を晴らす仕事をしているんだ。彼女の未練は琉太を抱き締めることだったんだ」
「未練?」
「やり残したことだよ。僕は五十年、この仕事をしているんだよ」
「五十年?僕と大して変わらないじゃん……」
大地はおもむろに琉太の胸に手を伸ばす。
それは、すうっと琉太の身体をすり抜けた。
「僕、幽霊だから」
「え?え?え?」
一歩二歩と後ずさる琉太。
「そんなに怖がらないでくれ。大地は私の息子なんだ……」
成り行きを見守っていた高橋が呟いた。
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