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「怖がらせたならごめんよ。煙の行き先に気付いたのは、この五十年で君がはじめてなんだ。煙の未練、見てみたくないかい?」
大地にそう言われて琉太の脳裏に大ばあちゃんの生前の姿が浮かぶ。
「それを見ていたら大ばあちゃんが幸せだったかどうか分かるかな?」
「君次第だよ。君が天国はあるかとか、大ばあちゃんは幸せだったのかを気にしていたのを君の大ばあちゃんは気付いていた。だからわざわざ君に分かるように僕のもとに来たのかもね」
琉太はごくんと唾を飲む。
「大ばあちゃんが僕を大地に会わせてくれたなら僕は知りたい!」
「よし分かった。これから君に煙の未練を見せよう。本当は煙が僕のもとに来るのが普通なんだけど、僕が君のもとに連れていくから待っててくれよ。おっと時間だ」
大地の身体が透けていく。
「仕事終わると僕、消えちゃうんだよ。約束はしたよ」
ふわっと大地は消えた。
「さて、もう帰りなさい。大地は約束を必ず守るから」
高橋に手を引かれて、琉太は火葬場の近くまで戻る。
「大地は五十年も前に亡くなった私の息子だ。仲良くしておくれ」
そう言われて「分かりました」と琉太は返事をした。
そっと火葬場に戻り、お骨になった大ばあちゃんを見るとまた悲しくなったが、大ばあちゃんの未練が自分を抱き締めることだと知った琉太は、涙を拭いながらも見よう見まねで大ばあちゃんを見送る。
大ばあちゃんが幸せであったかどうかは分からないが、大ばあちゃんと一緒に過ごした自分は幸せだったなと思いながら。
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