3人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
ポチ
夏休みは、実家に帰る予定ではなかった。
大学に進学して、すぐに彼女ができて、昨年も一昨年も彼女と過ごしていたが、今年の夏休みになる前に振られてしまった。
元々、地元は田舎で何も無いところだからあまり好きではなかった。
今まで親に何と言われようとも帰郷しなかった息子が、急に帰ってきたので、最初は母親も嬉しそうではあったが、息子の居る生活に慣れてしまったのか、長期にわたって実家に居ると余計な家事が増えると、愚痴を垂れてきた。
こんな扱いを受けるのなら、帰郷せずにバイトでもしていればよかった。しかも、何かと言えば、ブラブラしているんだからと、野暮用を押し付けられた。今日も、その野暮用に駆り出されることになる。
「ねえ、絹代ちゃんと全然連絡が取れなくなったの。アンタ、様子を見に行ってくれない?」
「え?絹代叔母さん?へぇ~、電話魔の叔母さんが連絡をよこしてこないとは珍しいね。」
「そうなのよ。変でしょう?」
絹代叔母さんは、母の妹で、独身。山奥で一人暮らしをしている、ちょっと変わり者の叔母さんだ。一人で暮らしている割には、寂しがり屋で、しょっちゅう母に長電話をしてきていたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!