11人が本棚に入れています
本棚に追加
「それは一体どのような病気なのですか?」
夫である男性が訊ねた。
夫婦に説明しているのは神経外科の医者である。
「簡単に言えば痛みを感じなくなります」
「痛みを…?」
「はい」
「その…命には…?」
夫は恐る恐る聞いた。
「直接的には危険性はありません」
「そ、そうですか」
夫婦はほっと胸を撫で下ろした。
「ですが、痛みを感じないということは、骨折や、病気の発見が遅れるということです。もしこれが先天性であった場合、赤ん坊のうちに、自分を傷つけることに歯止めが効かなかったところです」
「………」
二人は絶句した。
「娘さんは14歳、分別ある年頃だとは思いますが、ご家族にも十分注意が必要です」
「ち、治療法などは…?」
「無痛症は非常に珍しい病気です。私共の病院では前列がない上、明確な治療法もないのです…」
「そう…ですか…」
部屋には重苦しい雰囲気が流れた。
その後も少女の無痛症が治ることはなかった。
怪我をしても平気な顔をしている少女を見て、周りは気味悪がり、いつしか家族以外、少女の周りから人は離れていった。
そして、治療法も分からぬまま、二年が過ぎた。
最初のコメントを投稿しよう!