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【六時限目 ロングホームルーム】
この時間はまもなく行われる文化祭の打ち合わせだ。
このクラスも出店する予定でコスプレ喫茶らしいけど、私はあまり関係がない。
「怜奈は、今年も吹奏楽部の演奏会? トランペット吹いてるんだっけ?」
友人に聞かれて私は頷く。
「うん。今年はソロパートもらえたの。聴きにきてね」
「すごいじゃん。聴きにいくよ」
そして友人はニタニタとからかうような笑みを浮かべて、空野くんの方へ振り返る。
「空野。今年の文化祭、吹奏楽部の演奏を聴きにいったら?」
「古海さん……トランペット……吹奏楽部……」
目を見開きうわごとを唱えた後、空野くんはいつものように机に突っ伏してしまった。
友人も、空野くんを煽るように発作を起こすことを言わなければいいのに。遊ばれている空野くんが可哀相になってしまう。
「……古海さんのマウスピースになりたい」
「ブレないねぇ、空野」
可哀相だけど、いつも通りなのかも。
アルファベットになったりお弁当になったりマウスピースになったり、空野くんは忙しそうだ。
できることなら文化祭は空野くんと一緒にまわりたいな。二人で色んな出店や出し物をみてまわったら楽しそうだ。
ロングホームルームが終わって、放課後になる。生徒たちは帰宅したり部活に向かったりと、それぞれの目的に散っていく。
私と空野くんは部活が違うから、これ以上一緒にいることはない。今日を思い返して、進展のないままだったことに落胆する。
いつになったら、想いを伝えられるだろう。想いを伝えられないまでも、ちゃんとお話ができるぐらい関係になりたいのに。
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