ぜろ記念日ラブオール

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【一時間目 数学B】 「この問題を解いてもらうのは――今日の日付から、古海だな」  嫌な予感がすると思ったらその通り。今日の日付と出席番号が一致していたことで私が選ばれてしまった。  予習はしてきたけれどあまり自信がなくて、おずおず答えると先生が頷いた。 「正解だ」 「ああああ、可愛いっ」  先生の声とほぼ同時に、後ろから声が聞こえる。それは空野くんなんだと振り返らなくてもわかった。 「不安そうな古海さんやばい……録音したい……」 「……空野。お前、今日も古海に悶えてんのか」  はあ、と先生がため息をついた。先生だけではなく、この教室にいる空野くん以外全員が呆れている。  この『古海怜奈大好き病』は授業中だろうが治まることがない。私が喋ったり、動いたりするたび、発作のように起きるのだ。  空野くんを放っておいて、授業は続く。  けれど、先生は何かに気づいたようで黒板に綴っていた文字がぴたりと止まった。 「今日の日付は古海の出席番号、日直も古海。今日は古海の日だな」  先生の気分によって変わるけれど、回答する生徒を指名する時は『今日の日付が出席番号の生徒』や『今日の日直』が多い。つまり今日の私は、指名される可能性が高いのだ。  そして私が指名されれば、空野くんが悶える。 「空野、生きろよ。今日はやたら古海が喋る日だからな」  くつくつと笑いながら先生が言う。  この先生は数学の授業だけだからいいけれど、私やクラスメイトたちは半日ほど空野くんと一緒である。「古海さんの日……祝日にしよう」と恍惚としている空野くんを除き、みんなひきつった顔をしていた。
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