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【昼休み】
「ああ……古海さんの貴重な食事シーン。俺はあのお弁当になりたい。ワンチャンお箸でもいい」
授業中だろうが発作が起きる空野くんなのだ、食事中でもお構いなし。友人と机を並べてご飯を食べている間も空野くんは悶えている。
私の姿が視界に入ってしまえば食事にならないだろうと、いつも気を使って食堂に行っていたけれど、今日は満席。仕方なく教室に戻ってきた結果、空野くんの発作が起きている。
ちゃんと食べているか心配だ。振り返って確認したいけれど、目を合わせれば発作が悪化してしまいそうでできない。
「空野くん、ちゃんと食べてるみたい?」
「悶えながら食べてるから大丈夫。箸がぷるぷるしてるけど」
空野くんの様子を友人に確認してもらう。食べているみたいで安心だ。でも、箸を震わせる空野くんを想像すると、笑ってしまいそうになる。ちょっと可愛いかも。見てみたかったな。
「しかし、飯時まで『古海怜奈大好き病』とは……恐ろしいね、空野」
友人が呆れたように呟いた。
「怜奈が書いた絵とか、空野なら喜んで買いそう」
「えー……さすがにそこまではしないと思うけど」
「試しに、この紙に適当なこと書いて包んで、『幸せになるお守りです』って言ってみてよ。空野、買うんじゃない?」
「なんで売りつける話になるの……」
そんなの、空野くんで遊ぶようなものだ。人の気持ちで遊ぶなんて嫌。私は首を横に振って、拒否のアピールをした。
しかし友人だけでなく、話を聞いてしまった他の生徒たちも輪に混ざってきて、あれやこれやと話が進んでいく。
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