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結局、私はお守りを作ることになってしまった。
お守りといっても安っぽいもので、レポート用紙に適当な言葉を書いて四角く折りたたむだけ。表面に『お守り』と書いてなければ、ごみだと間違えてしまいそう。
それを持って空野くんの席に向かう。
「あ、あのね空野くん……これ、私が作ったお守りなんだけど、買う?」
空野くんもそこまで騙されることはないだろう、と思っていたけれど。
私が言い終えると同時に空野くんは手で顔を覆う。
「手作り尊い……幸せ……ここに俺の墓を建てる」
相変わらずの恍惚とした呟きをしつつ、空いた手でペンを握る。
ノートを覗きこんでみると、そこには『五枚。言い値で買います』と書かれていた。
空野くん、全力で騙されている。それどころか、五枚まで数が増えてしまった。どうしよう。一枚しか作っていないのに。
このやりとりを見ていた友人やクラスメイトらは、腹を抱えて笑っていた。空野くんがここまで『古海怜奈大好き病』だと思っていなかったのだろう。
「あ、あのね、空野くん! これ一枚しかないんだ。あとお金はいらないから……受け取って」
机の上にお守りを置いて、立ち去る。
「古海さんの手作りを無料配布!? ああ、ここが楽園……コピーしなきゃ、あと額買ってこよう。観賞用と毎日拝む用と持ち歩き用と布教用と……いや布教はいらないな、古海さんの良さを他のやつに教えたくない……」
背後からぶつぶつと聞こえてしまって、恥ずかしさに顔が赤くなる。そこまで私のことが好きなら、ちゃんと向き合ってほしいのに。
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