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ぜろ記念日ラブオール
【朝 登校】
私は空野くんに片思いしている。そして空野くんも私のことが好き。
私たちは両片思いだ。
だけど。
まともに話したことがない。
朝。教室に入ると、既に空野くんの姿があった。
いつもより少し早い時間だから他のクラスメイトは来ていなくて、教室には私と空野くんだけ。
「おはよう、空野くん」
挨拶をしたけれど、空野くんから挨拶は返ってこない。それどころか目が合った瞬間、机に顔を突っ伏してしまった。
寝ているわけではなくて、ちゃんと起きてる。肩がぶるぶると小刻みに震えていたから。
空野くんのとある病だ。こうなってしまうとどうしようもないので、放っておいて日直の仕事をはじめる。ずれた机の位置を直していると、続々とクラスメイトたちがやってきた。
「おはよー。珍しい、怜奈と空野が揃ってる」
「うん。日直だから早く来たの」
黒板を指さしながら答えた。黒板には『日直 古海 怜奈』と私の名前が書いてある。他のクラスメイトたちも、私と空野くんと黒板の三点確認をして、「ああ……なるほど」と納得していた。
相変わらず机に伏せたままな空野くんの肩を叩いたのは、テニス部の男子だった。空野くんの友達だ。
「お前。朝練終わって急いで着替えてると思えば、古海が日直だからか」
そしてようやく空野くんが顔をあげた。戸惑うような恥じらうような複雑な表情をして、叫ぶ。
「古海さんが尊い。今日も可愛すぎて生きるのがつらい。朝の二人きりの時間が幸せすぎて呼吸忘れそうだった」
「お、おう……呼吸は忘れないでくれ」
「古海さんが可愛すぎる! 黒板に書いてある名前すら尊い」
「……また空野の『古海怜奈大好き病』がはじまった」
空野くんのこの状態はもはや当たり前のこととなっていて、誰も驚かない。悶える空野くんを放置して、教室内は昨日のドラマや部活の話に移り変わる。
私と空野くんは会話ができない理由、それはこの『古海怜奈大好き病』せいだ。私が話しかけようが挨拶しようが、空野くんはまともに答えてくれない。
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