失恋~利用されていました、が~

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 私がそう言うとイェンはさみしそうに微笑んだ。 「本名は言えない。仕事は……君らから見たらテロリストと思うかもしれない」 「やっぱり狙いはグレイ・グーね」 「そう。東京の経済に少しの間打撃を与えるために来日した」  グレイ・グー。ナノマシンの無限増殖。  輻射熱反作用機構――ラームを有するナノマシン群は周囲気温が一定以上に下がると反作用効果を停止するセーフティーが当然入っている。  だが、ナノマシン自体の数は無限に増殖され続ける。ナノマシンに自殺機構は備わっていない。ラームを構成するナノマシンが人体に無害であるためだ。  つまり濃霧のように増殖したナノマシンがこの地から東京全土に広がっていくことになる。当局が環境ナノマシンの異常を検知してアンチバイルスを用意するのは数時間は掛かるだろう。だがそれでは手遅れだ。そこまで対処が遅れるとラームの濃度が適正値に戻るのに半年はかかるだろう。半年間も太陽光が弱まれば、農林業にダメージが直結する。つまり野菜や米の値段が高騰することになる。 人命に直結しないとはいえ――日本経済は間違いなくダメージを受ける。     
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