毎夜の徘徊~湿度を求めて~

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 当時、ラームの発明は、「2045年に人類が達成したシンギュラリティという偉大なマイルストーンをも上回る」とまでうたわれたほどだ。  ラームは温暖化対策にも大きく貢献し、国連気候変動枠組み条約締約国会議での日本の発言権は拡大された。むしろ日本主導の世界政策になったと言っても過言ではない。  実際、シンギュラリティというやつに到達してから50年以上経っているはずだが、前後で何が変わったかはっきりわからない。(私は生まれていないので、はっきりわからないのは当然だが)  社会の授業によると、人工知能が発達していなかった1世紀前は自分のチャネルが存在しなくて、マーケティングというものを外部から提案されていたらしい。  それだけでも驚きなのだが、何より驚いたのは、コンビニやスーパーで買い物をするときは、商品を持ってレジに並んでいたらしい。商品を抱えて人々が行列を作るという光景を思い浮かべると何だか可愛らしかった。  まぁ、そこら辺の体験はあんまり興味がない。  この1世紀の間に失われてしまったもののなかで、どうしても体験したいものがある――私は暑い夏というのを体験してみたい!  昔の夏は日が落ちた後も太陽の輻射熱のせいで夜も暑かったらしい。真夜中になっても30度超えの日もあったそうだ。  前に読んだ古典の恋愛小説でこんなくだりがある。     
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