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運命の出会い~リリとイェン~
午前零時。家を出ると廃棄物でできた標高500mの小山に向かう。お気に入りの散策ルーティンの一つだ。由来のせいなのか、この小山は人気がなくて物思いにふけるには調度いい。頂上のベンチで1世紀前頃の恋愛小説を読むのが好きだった。街灯が明るくて快適に読書にも困らない。眼にはちょっと悪そうだけど。
頂上についたとき、先約がいることに気が付き、一瞬声が出そうになる。この時間・この小山で人にあったのは初めてだ。
短めの黒髪ですらっとした人――。白い街灯に照らされて、目を閉じているのが分かる。私がその姿に見入っていると、その人は静かに目を開けて――。
「やあ」
「あ、あなたは? ここで何をしているの」
急に話しかけられてつい、どもる。こんなロケーションだし、危ない人だったらどうしよう。嫌な妄想が脳裏をかすめる。
「イェン。留学生なんだ。ナノテクノロジーの研究をしていて、こうやってラームを眺めているのさ」
イェンと名乗った人は空気をすくうような仕草をして、愛おしそうに手のひらを眺めた。
なにこの人。どうみても変質者だ――。私は振り返りその場を去ろうとしたが――。
「君、名前は?」
「わ、私は、リリ」
「君は何をしているの?」
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