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それから毎晩、イェンの手伝いをする日が始まった。
イェンはトレーラーハウスを所有しており、山頂近くの駐車場にかりそめの住居を持つ。シャワーとキッチンもあり不自由ない生活のようだったが、何より驚いたのは内部にはナノマシンの基礎となる半導体を加工するための微細加工機や、ナノマシン宙に浮かべるためのナノモーターもストックされている。まるで小さなナノテク研究所だ。
私がキッチンを借りて料理をすることもあった。これって通い妻気分……なのかな!
イェンはある日、私が持参したナノプログラムを見せると目を丸くした。
「散布装置もすごいけど、このプログラム――これって本当に君が造ったの?」
そうなの、私が全て独学で造ったの、と言えるとカッコイイのだが、残念ながらバックボーンは父から得ている。勿論、お父上にご教示いただいた理論は全て理解してモノにしている。現状、高校の卒業資格は4月の時点で取得しているので、この一年は父の指導の元、ナノテクノロジーの研究に没頭するつもりだった。
「これはありがたい。できれば増殖アルゴリズムまわりを君に任せたいんだが、構わないかい?」
「喜んで!」
面白くなってきた。
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