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夏休みは、コンビニに行き、弁当を買い、煙草を買い、宿題をして、ゲームをして、寝て、起きて、気付くと終わっていた。 二学期の始まりの朝、教室の扉を開けると、当たり前に僕の後ろの席はなくなっていた。 始業式に出るのがかったるくて、僕は屋上へ向かう。 煙草を一本吸ってから、手すりを乗り越えた。 錆びた手すりは、早く手放したいと感じる程の熱を持っていた。 この手すりを離せば、僕の体は宙に投げ出され、その数秒後、校舎裏の職員駐車場を僕の体で汚すことができるはずだ。 そう考えて目を閉じると、心臓の音が体全体を揺らした。九月の陽はまだ暑い。 夏の残り火は容赦なく後頭部と背中を焼き付ける。額に汗が滲む。 この鼓動が暑さからくるものでないことを僕は知っている。 満足した僕は踵を返し、手すりを飛び越え屋上の平地へ戻った。 「お前はひとりじゃないからな」 あの時、あいつはそう微笑みかけた。だけど僕は、今でもひとりな気がしてならない。 平地へ戻ると同時に、遠い真下からカチンという音が微かに聞こえた。 何の音かと再び職員駐車場を見下ろすと、駐車場に光るものが見える。嫌な予感がしてポケットをまさぐった。やっぱりか。ジッポを落としてしまったらしい。 職員駐車場まで降りてジッポを拾う。落ちた衝撃で蓋が開かなくなっていた。あの高さから落ちれば仕方ないか、と屋上を見上げた。いつもの背の高い室外機が見える。僕が煙草を吸っていた場所はすっぽりと隠されている。 大志はよくここから僕を見つけたものだ。
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