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「俺も混ぜてよ」
後ろから、高校生らしい張りのある声がした。振り向くと、短髪に黒い肌、白い歯のまさに健康優良児そのものといった男子生徒が立っていた。さらにそれを助長するかのような爽やかな笑顔を僕に向けている。
「へぇ、瀬名、お前煙草吸ってんだな。見た目によらず不良だね」
大志は自分のポケットから煙草を取り出して、僕よりもずっと慣れた手つきでライターに火を付けた。
「職員駐車場からチラッとお前が見えてさ。それで俺もここに来てみたのよ」
大志は室外機にもたれかかって話を続けた。
「いい場所だなぁ。これからは俺も使わせてもらうよ」
僕にはそれに答えるより先に聞くことがあった。
「ごめん。誰?」
僕にとって大志は初対面だった。
煙をぷっと吹き出して、大志は笑う。
「お前の後ろの席の用宗だよ。用宗大志。同じクラスの後ろの席に座ってる奴くらい覚えとけよ」
クラスメイトに全く知らない奴がいるとは思わなかった。しかも、後ろの席だなんて。
「まぁいいけどさ。これからよろしくな。授業始まる前にトイレ行きたいから先行くわ」
そう言うと、煙草を空き缶に突っ込んで大志は小走りで屋上を出て行った。
少ししてから、臭い隠しのガムを口に放り込んで屋上を出た。
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