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 わたしは、あなたをあなたと呼ぶ。  あなたは、わたしをキミと呼ぶ。  そんな風になるまで、二十三年も付き合いましたが、子宝には恵まれませんでした。  それでも、あなたは、わたしを愛おしく想ってくださる。  山里の中で、ひっそりと暮らしておりました。  ところが、今年の海の日に、本当に海に行こうと誘ってくださいました。  それも、もういい年して、久し振りのドライブですって。 「キミ、いいだろう。レンタカーは、カローラ1100の青いボディー。1100とは、『プラス100ccの余裕』のキャッチフレーズで売り出していただろう」 「初めてあなたが欲しいと思った車でしたね。この色もいいって」  あなたが、キーを差し込み、この感覚がいいとときめいていて、わたしも嬉しく思いました。 「キミ、シートベルトは大丈夫だね。よし、では出発しよう」 「まあ、朝霧が晴れたら、随分と爽やかですね。あなた」  エンジン音は、昔を感じさせます。  そして、あの大きな大きな青い空は、あなたとわたしを夏に誘います。  永遠に続くと思っていました。  けれども、ざざざと黒雲が顔を広げ、あっと言う間にゲリラ豪雨となりました。     
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