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 そのうち、雷まで鳴り出して、ぴしっと空が割れるのが、車の窓をうがつ雨に恐ろしくうつりました。 「あなた、お天気がすぐれないから、あの山門へ着く前に去りましょう」 「キミは臆病だな。山寺前さえ抜ければ、この青いボディーのように、空も変わるよ」  あまりに強い雨でした。  そして、久し振りの山門のコースでしたから、不安もつのります。  ドッドッドッ……。  くすんでしまった青のカローラ1100の唸り声とわたしの鼓動が重なります。 「あなた、確かこの辺りになかったかしら」 「何がだい」  ドドドドドドドドド……。  私は心の臓が虫けらのようになりました。  細かく刻み、息もあがって来ます。 「キミ! あったか? こんな所に信号が!」 「あったから、青信号が光っているのでしょう」  あなたは、ハンドルをぐっときって青信号のお化けを避けようとしました。 「あ、あ、人影が……!」  だぶだぶと流れるゲリラ豪雨の中、二人で近付きます。  ひやひやとして、バイクの女性を確認しました。 「青信号で渡ったバイクをひいてしまったのでしょう。あなた、脈拍がないわ……」  救急車を呼ぼうと何度コールしても通じません。 「キミ、どうしようか?」 「あなた、警察にしますか?」  そして、振り返ると、いつまで待っても青信号のままでした。     
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