予兆

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「とっても美味しい。 麗奈ありがとう」 大お祖母ちゃまが私のスープを一口啜りそう言ってくれた。 だが野菜の大きさは不揃いだし煮込みすぎて全体にべちゃっとしている。 レシピを教わって家で練習してみたものの彼が作ってくれた料理には程遠い。 納得のいく仕上がりではないが妥協して夕食の一部に供してもらった。 「あんまり上手く出来なくてごめんなさい」 「そんなことないわ。 柔らかいし私にはちょうどいいお味」 「…そう?」 「本当よ。 あなたも食べなさい」 言われて口に入れてみると、 味だけは結構いける。 「麗奈がブイヤベースを作ってくれるなんて思ってなかった」 「びっくりさせてごめんなさい。 だけど自分で作ってあげたくて」 「嬉しいわ。 あの人とよく一緒に食べていたのを思い出した」 大お祖母ちゃまが、 戦後日本に渡ってきた宣教師と駆け落ちしてフランスに渡ったのは十七歳の頃。
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