宵世界紀行

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「しゃ、しゃべ……!」  喋った。という声は最後まで口からでていかず、ただ口を金魚かのごとく動かすだけになってしまった。  このような人語を使用する化物に出会った時は、36計逃げるに如かず。なのだろうが、生憎、腰が抜けて動けない。 「ふむ、大丈夫であるのか?」  妙な日本語で話しかけ、手を差しのべてくる。  理解不能。本当に、理解不能だ。 「話が通じるのか……?」 「ふむふむ、もちろん。ここに人間が迷いこむのは珍しいがあることだ。人間語は使えるのだ」  コミュニケーションを取れると理解したら、妙に冷静になった。どこか、現実味が無さすぎて、どこか映画を見ているような気分も拍手をかけたのだろう。  話せるのなら、文字通り話は早い。コミュニケーションを取れる化物より、理性の通じぬ人間の方が怖いのだから。 「そ、そうですか。で、あなたはどういった生物なのですか? ここに人間が迷い混むというのは? ここはいったい?」  分からないことが多すぎて、どうにも早口になってしまう。     
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