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宵世界紀行
寝付けない夜だった。いやに秒針の音だけが大きく響いて、目線は否応なしに時計へ向かってしまう。どうやら針は1時を越えているようだ。
どうにも寝れない夜は、気分転換に外を散歩するに限る。寝床から這い出て重い体を引き摺り、身だしなみなどお構い無しに、乱雑な髪の毛、だらしないスウェット姿のまま外へ出る。
夜も深まった頃の散歩は好きだ。誰もいなくて自分の足音のみが聞こえてくる。まるで世界に自分だけかの様な錯覚に陥ってしまう。
恐らく、世界の終末はこれほどに静かなのかも知れない。夜中も世界の終末も、静謐と切なさをはらんだ空気がそこにはあるのだろう。
そういったとりとめのないことを考えながら、自分の主観ではゴーストタウンと化した町を歩いていた。
ふと、足を止める。どうやら見知らぬ場所に迷い混んでしまったらしい。どこだここはと見渡すが覚えがない。来た道を引き換えそうと振り返っても、本当に自分はこの道を先ほどまで通っていたのか疑わしくなるほどだった。
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