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2.亡くなったはずのあなた
「お久しぶりですね。将太さん」
驚いて声のした方を見ると、高校生ぐらいの、ショートヘアのかわいい女の子が話しかけてきた。
「君、誰?」
「忘れたんですか? 比沙子です」
比沙子……!?
「も、もしかして、幽霊……!?」
「少し違います。どうしても将太くんに逢いたくなって、神様に時間をもらってちょっとだけ帰ってきたんです」
神様に時間をもらう? そんなおとぎ話があるか。
「あの、からかうのはやめてくれないかな?」
「からかってなんていませんよ」
これはなんだ、新手の詐欺!? それともだれかのいたずらか? そうだ。比沙子さんしか知らないことを話せば……。
「そうなんだ。ところで比沙子さん、友達の……ほら、よく一緒に遊んだまいさん、元気にしてるかな?」
少し違う名前を言った。イエスかノーでは答えられない。これでわかるだろう。
「真菜さんでしょ? 元気にしてるわよ」
ひっかからなかった。この娘は本当に比沙子さん……、なのだろうか?
「隣、空いてるでしょ。座ってもいい?」
「あ、うん、いいよ」
バスは深夜の東北自動車道をひた走る。周りには寝ている人もいるのでひそひそ声で話す。
「久しぶりだね。元気にしてた?」
「うーん、最近疲れ気味で」
「そっか。毎日忙しいの?」
「毎日って訳じゃないけど、単位をつぶすのが意外に大変で」
たわいもない会話だけど、さっきまでとは違って車内が楽しい空間に思えて来た。そういえば子供の頃に見た深夜番組に出ていたタレントさんは、仲間と一緒だからこそこういう旅ができたのだろうか。
そんなことを考えながら、思い出話に花を咲かせる。それらにも違和感なく受け答えをしている彼女を見て、この人は比沙子さんだと、だんだん確信に変わって来た。そして、
「比沙子さん、亡くなったの、本当に残念だ。あの瞬間は今思い出してもつらいよ」
「私も……、もっと一緒の時間過ごしたかったな。朝になったら帰らなくちゃいけないの」
一緒の時間!? それは僕も同じだった。だって彼女が好きだったんだもの。
「え、それって?」
「……、決まってるじゃない。あの時は言えなかったけどさ、将太くんのことが好きだったんだよ、私」
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